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約10年前。私が郡山の診療所の雇われ院長をしていた時の話です。
これは、いつも友人や新しく知り合った人も含めて相手が医師の場合に必ず私が話をする経験談です。
当時私が1年の勤務を終え、勤務先をやめることになった時。
出入りをしていた業者がいたのですが、その方との会話です。
私が辞めるということで、
業 「先生、もう次の勤務先は決まられましたか!?」
私 『まだはっきりは決めてないけど...』
業 『○×に △■□内科というのがあって、そこは大体1日100人は患者さんが来てるんですよ。その隣にスペースがあるので、そこに先生の診療所を作りましょう!先生なら、すぐに儲かります!!』
私 『はぁ...』
業 「私のよく知っている業者がいるので、事業計画をお見せしますね!」
後日。△■コンサル という業者名の入った事業計画書を持参してきました。
開業初日からの平均患者数は100人。
初年度の売り上げは通年で8000万。(月当たり約667万ですね)
(ちなみに私が院長をしていたクリニックで、最初25人/日位だったのを約半年で100人/日位にしたのですが、驚異的と言われました。
また、その時の医療の売上で、院内処方でmaxで約800万近くでした。院内処方は薬代も売上に入るので、内科など高い薬が入ると、売上自体は増えますが、薬の購入費も増えてしまいます。大体max時点で月300~400万になっていました...。なので、院外処方ならいっても500万/日程度だと思います。
そのことからも、全く新規で、例え隣に1日100人の患者さんが来る内科医院があっても、初年度1年の平均患者数が100人はかなり過剰な見積だと思います。)
で、
業 「先生!先生が開業されるのであれば、私はなんでも持ってきますので言ってください!ごみ箱でも、カラーボックスでもなんでも持ってきますから!!
あ、CTはいいもの買った方がいいですよぉ!!」
私 『(いや、ごみ箱とか100均で買えるから、いらんのやけど...。それより機械の値下げとかはないんかいな...)』
業 「いやぁ。先生がんばりましょうねぇ!!」
「あ、先生、僕らの仲間の間で先生方のこと何て言っているか知ってますか!?」
私 『いや、知らんけど..。なんて言われてんの?』
業 「ガムって言われてるんですよ!」
私 『ふーん、なんで?』
業 『噛んで噛んで甘いところが無くなったら、ポイですわ!(ガムをゴミ箱に投げる真似と共に..)』
私 『・・・』
言ってからすぐ気づいたらしく、突然慌てて
業 「あ、うちは違いますよ!うちは...」
私 『あ、そう...』
もちろん、後日ガムになることは丁寧にお断りしました。
普通の人が聞いてもよく分からないかもしれませんが、新規開業する時に診療所なりを作れば当然お金がかかります。
医者は借り入れをして、地代家賃、時に内装費、広告宣伝費、人件費、その他諸々の支払いをします。
つまり、業者は基本的には医者が銀行などから借り入れた現金でお金をもらうわけです。
最近はよく、下請け、孫請け、さらに孫請けなどで、かつ、支払をしてもらない、という報道を目にしますが、おそらく個人で医療機関の開業を行う場合、大概は上記のように医者が借り入れを起こして、業者は現金をしっかり受け取れる可能性が高いようです。
そういう意味で、業者は不必要に高いものを勧め、褒め殺しだなんだとお金を吐き出させ、そうして借り入れた現金(甘いところ)がなくなって、噛み尽くしたら、『ポイ』して、次のガム(医者)を口に入れる。
というわけです。
また、開業というのは通常、自分が長く務めた勤務先の近くで行うことが多いですが、これは、開業時に少しでも知っている患者さんを引き抜かないと、全く新規で開業してしまうと(落下傘開業といったりする)、大体3ヶ月くらいは患者さんは殆ど来ませんので、人件費、地代家賃、必要諸経費の持ち出しなどでかなりきつくなるからです。
勿論、そういう意味ではしっかりしたマーケティングをしている業者さんの評価などはとても重要ですが、そういう所には甘い汁を吸おうと群がる人々もやはりいるのですね...。
その会社は今も郡山でしっかり営業しています。(かなり大きい病院の近くでうまくやられているので。)
その時にその業者が持ってきた事業計画書は今も保管し、自らが気を引き締めねばならない時に見返すこともあります。
そういえば、なんかつい最近も似たような輩を目にしたことがある気が...。
一介の医者である私ですら、これまで何度もきっちりとやってきたレベルの仕事を、ことさら私はそのあたりの処理は慣れているので任せてもらえば大丈夫!!と
強引に言いながら、結果は誤りだらけ...。逆に尻拭いに奔走しなければならなくなる...。
それに逆切れ...。 はぁぁ...。
結局、今の日本にそんな甘い話は存在しない、ということでしょう...。
国家権力が平然と嘘をつく時代ですから...。